〝「父さん、今日はサボっていい？」 「サボる？」パイ（ネイマールの父）が息子のところに歩いてくる。「どういうことだ？」 「みんなと練習したい」ネイマールは言った。「長い間、部活に顔を出してないから」 パイは立ち止まって、フットサルコートを眺め…

〝「まだ連れて行ったりはしないよ。ちょっとプレーを見たかっただけだ」 「誰の？」ベッチーニョはとぼけた顔でたずねた。 「君のチームで、次のビッグスターになる少年があの子の他にいるか？」 ベッチーニョは大切な息子を眺めるような目でジュニーニョ（…

〝フィノ監督は興奮しながら、サイドラインのベンチから立ち上がった。 「みんながジュニーニョ（ネイマール）に夢中だ」大きく響く歓声に負けない声で、ベッチーニョが監督に話しかける。 「切り返し、体のひねり方、ドリブルの緩急……」フィノ監督は、呟く…

〝テレビ局のスタッフがカメラをかまえる。ブリオーザのコートにライトが当てられた。サンパウロ州チャンピオンシップのテレビ中継の準備だ。まだ無名だったネイマール・ジュニアは、新しいヘアースタイルで登場した。横を刈り上げ、ふさふさした前髪をつん…

〝ランチはいつもグレメタルで食べた。マーグリ監督がホイッスルを吹くと、少年達はコートを飛び出して食堂に急いだ。 「昼食だ！」監督はジュニーニョ（ネイマール）とレオ・デンチーニョに大声で言った。 「いりません」ジュニーニョが答える。「まだ練習…

〝「父さん？」 「どうした？」 いつかプライア・グランデに家を建てるよ。サッカーができる家だ。電気も消えたりしない。」 「それはいい考えだ」 「父さん？」 「ん？」 「僕、サッカーが大好きなんだ」 「知ってる。父さんも大好きだ。またサッカーの話を…

〝ふたりがロウソクの前で楽しそうに踊っていて、暗く沈んだ部屋が明るくなり、パイ（ネイマールの父）とナジーネ（ネイマールの母）も思わず微笑んだ。 ジュニーニョ（ネイマール）とラファエラ（ネイマールの妹）が両親の手を取って、四人で踊り始めた。 …

〝ディフェンダーふたりが詰め寄ったとき、ジュニーニョ（ネイマール）はボールをちょんと浮かせた。ループシュートだ。ボールが木の葉のようにゆっくりと落ちて、ゴールネットを揺らした。 グレメタルの監督、アルシージス・ジュニオール・マーグリは目を丸…

〝ジュニーニョ（ネイマール）はグレメタルの建物を見上げた。夢みたいだ。 とにかくサッカーをするのが楽しくて、うまくなりたいとか、そういったことは考えなかった。 ブラジル人が夢中になるようなプレーをする。それが楽しくて仕方なかった。 サッカーが…

〝数年後、パイ（ネイマールの父）とジュニーニョ（ネイマール）は二人だけの習慣を始めた。そしてそれを一生続けようと約束した。ジュニーニョがピッチに立つ時は、一緒に二人で聖書の一節を口ずさむことにしたのだ。 それができない時は、パイが紙を息子の…

〝「ぼ、ぼく、ずっと父さんからかくれてた。ピッチをめちゃくちゃにして、父さんに叱られるのがこわかったから」 ジュニーニョ（ネイマール）は打ち明けて、父親の目をじっとみつめた。 「かくれてた？ばかなやつだな。 父さんが気付かないと思ったのか？」…