💗『ネイマール-ピッチでくりだす魔法』より
〝フィノ監督は興奮しながら、サイドラインのベンチから立ち上がった。
「みんながジュニーニョ(ネイマール)に夢中だ」大きく響く歓声に負けない声で、ベッチーニョが監督に話しかける。
「切り返し、体のひねり方、ドリブルの緩急……」フィノ監督は、呟くように言った。「ボールを絶対に足元から離さない。ほんとにすごい少年だ!」
「優雅なダンスのようだろう?」とベッチーニョ。
「あの子に教えてやることは何もない」監督は言った。
「じゃあ、私からひとつアドバイスを。ジュニーニョのプレースタイルに口をはさむな」ベッチーニョは言った。
「君の言う通りだな。あの子は天才だ。知っての通り、私は天才じゃない」
ベッチーニョは肩をゆすって笑った。〟