💗『ネイマール-ピッチでくりだす魔法』より

〝テレビ局のスタッフがカメラをかまえる。ブリオーザのコートにライトが当てられた。サンパウロ州チャンピオンシップのテレビ中継の準備だ。まだ無名だったネイマール・ジュニアは、新しいヘアースタイルで登場した。横を刈り上げ、ふさふさした前髪をつんと立てて、コックの帽子のような髪型だ。

 

ジュニーニョネイマール)は、ディフェンダーの壁をすり抜ける、すさまじいシュートを放った。ゴールキーパーからボールが見えないタイミングを見計らった絶妙なシュートだ。

コートに集まった観客がどっとわいた。フィノ監督は飛び上がって、ベッチーニョに抱きついた。観戦に来ていたロバート神父も飛びはねて喜ぶ。

パイ(ネイマールの父)とナジーネ(ネイマールの母)は試合中ずっと立ちっぱなしで、次々にゴールを決める息子に見とれていた。

「あの子がボールに触ると、優雅なダンスを見ているようです!」テレビのコメンテーターがマイクに向かって大声で話している。

そばにいたベッチーニョには、天才少年を褒めたたえる言葉が、全て聞こえた。

試合前、ジュニーニョが小走りでピッチに立った時、テレビカメラは他の少年達に向けられていたが、試合終了後、ジュニーニョがピッチから出る時には、全てのカメラがジュニーニョに向けられた。チームは決勝で敗れ、準優勝だったが、その日、ブリオーザのピッチに立ったネイマール・ジュニアは一気に有名になった。〟