💗『ネイマール-ピッチでくりだす魔法』より

〝「ぼ、ぼく、ずっと父さんからかくれてた。ピッチをめちゃくちゃにして、父さんに叱られるのがこわかったから」

ジュニーニョ（ネイマール）は打ち明けて、父親の目をじっとみつめた。

「かくれてた？ばかなやつだな。

父さんが気付かないと思ったのか？」

「どうしてわかったの？」

とっくにばれてたんだと思いながら、ジュニーニョはたずねた。

「さあ、どうしてだろうな。仕事から帰って来たら、ピッチがめちゃくちゃになっていた。どう考えても、誰かがあそこで走り回ったあとだ！

次の日、また芝生の種をまいた。お前が気付くわけがないよな。布団にもぐりこんで寝ていたんだから。みてみろ、もうすぐきれいな芝生が生えそろうぞ」

ジュニーニョは立ち上がって、裏庭を見に行った。

「怒ってる？」ジュニーニョはたずねた。

「怒る？まさか、大よろこびだ」

パイ（ネイマールの父）は答えて、くすくす笑った。

「大よろこび？」ジュニーニョは言った。大人の考えることは、さっぱりわからない。

「もちろん。あのピッチは、お前に遊んでもらうためにつくったんだ。芝生がきれいになくなるまで、お前は駆け回ってくれた。ピッチは走り回るためにあるものだろう？」

「けど、めちゃくちゃにした」

「走り回ってめちゃくちゃにしたんだ。お前は当たり前のことをしただけだ」

パイは言った。

「心配するな、思いきり遊べ」〟